SIer関連メモ書き

SIer関連のメモ書きをしておきます。お客様向けも、業界人向けも、ごっちゃまぜ。

アジャイルさておき、システム開発で大失敗しない方法

下のエントリーがバズってたので、勢いで「システム開発で大失敗しない方法」を書いてみる。

成功する方法じゃなく、失敗しない方法でもなく、あくまで「大失敗」しない方法についてである。

ledsun.hatenablog.com

 

結論から書くと「まずは少額でシステムのコア機能の検証をやろう!」である。

この話は、色んな人が何度も話してたり、書いてたりするが、全然浸透していない。

開発手法以前に「システムの骨格作り」で、大体みんな間違ってる。

「当然やってるよw」って人は、ここで読むのをやめて、周りに啓蒙しましょう。

 

なんでやれてない(難しい)かと言うと、その理由が当然ある。

 

少額と言っても、そこはシステム開発なので、100〜500万円くらいはかかる、検証だけで。

それくらい出さないと判断できないことが多いし、期間も3〜6ヶ月かかる。

牛丼みたいに、早くも安くもない。

その金使って、その期間待って「やっぱダメでした」が日本企業だと、難しいのはよく理解できる。

ただ、大失敗したくないなら、やらないとダメ。

 

こういう話を発注担当者さんにすると、毎回驚かされるのが「検証してないのに、このシステムが絶対に機能すると思っている」こと。

上手いプレゼン資料だけで「イケる!」みたいな気がしちゃってるから、悪い意味でヤバい。

 

ウォーターフォールか?アジャイルか?みたいな開発手法の話題は、まずはこの土台があった上での話だと思う。

検証で良い結果が出たら、一気にウォーターフォールで作り切った方が良い。

ちまちま2〜4週間でスプリントする必要はないだろう。

 

この辺の感覚をやしなうのは、SIerに居ては難しい。

サイバーエージェントリクルート出身起業家などは、皆さん持ってる。

仮説立てる → 感触・数字見る → 上手く行った → 一気に走れ!

みたいな、そんな当然のことを、当然のようにやれる。

 

それでも機能するとは限らないし、小さい失敗は限りなく発生する。 

「システムを開発するとは、そういうものだ」という共通認識を、まずは啓蒙しましょうって話。

 

 

SES業界の不都合な真実…と抜け道

今、業務委託で技術者を探すと「素晴らしい技術者どころか、普通の技術者にも、なかなか出会えない」という話をよく聞く。

「素晴らしい技術者」ともなると、太平洋に迷い込んだ金魚を探すようなものだ。

 

さて「素晴らしい技術者」と表現したが、どんな技術者のことだろうか?

 

「素晴らしい」には様々な定義があるが、SES業界で言えば「顧客満足度が高い技術者」が、そう表現される。

そして、顧客満足度が「高くも低くもない」技術者が「普通な技術者」となる。

あくまで私の感覚値だが、1割が「素晴らしい」、6割が「普通」、残3割が「至らない」技術者である。

 

「普通と素晴らしい合わせれば、7割もいるじゃないか!」

「だったら、普通の技術者は、すぐ見つかるでしょ?」

…と思うだろうが、これは間違いだ。

 

今は、空前の技術者不足である。

 「普通の技術者」レベルであっても引っ張りだこである。

ゆえに、ビジネスとしてオイシイお客様への紹介が優先される。

市場に出回るのは、残った「至らない」技術者ばかりである。

 

SES提供会社が考える「オイシイお客様」は、ハッキリしている。

多人数発注してくれて、稼働が安定(残業少ない)していて、長期間発注してくれるところだ。

しかも、過去の取引で、問題無く続いているところを最優先にする。

ビジネスでは、当たり前のことだ。

 

冒頭のような話を聞くたびに「素晴らしい技術者1名だけを、安く、すぐ簡単に手に入れられると思っていないか?」と疑う。

こういう顧客はよほど個人的に仲の良い営業マンを見つけない限り「非注力顧客」扱いになり、提案される技術者は、だいたい「至らない」レベルになるだろう。

残念だか、これが真実だ。

 

それでは、予算が少なく、初めて発注するような企業の場合、必ず「至らない」技術者しか提案貰えないのか?と言うと、そうならない抜け道もある。

方法はふたつ。

1.1社の営業マンに独占的に探させる

2.魅力的な条件にする(単価と募集人数以外で)

 

1に関しては、細かく説明するまでもないと思うが「1名枠に多数の会社から募集します」といわれるよりも「御社独占で、まずは探してください」と言われた方が、営業マンは頑張る。

2に関しては「在宅作業が可能」「面白そうな技術を使っている」「該当技術は未経験でも挑戦OK」など、技術者に直接響く条件を提示すれば良い。

 

「金がなければ工夫をする」
これもビジネスでは基本的なことだが、SESで技術者を探す場合にも同様である。

発注側が、この程度の工夫をするだけで、良い技術者が手に入りやすくなったりするものだ。

 

チャットツールは飲食業界と相性が良い

先日のGWを使ってシリコンバレー周辺を、ビジネス視察してきました。

その際に、チャットワークの山本さんにお時間いただきました。

貴重なご意見をいただきまして、大変ありがとうございました。

 

革新的なビジネスが産まれる土地にいき、このご縁があったので、自分なりに「チャットツールで利用料以外に、さらに儲けるためにはどうすれば良いか?」という事を、ちょっと考えてみました。

 

ビジネスアイディア考えるの楽しいー!

…と言うわけで、頭の体操目的のエントリー(無責任な適当アイディア)です。

 

まずは、前提の確認。

 

正直、チャットツールを単体で儲けようと思っても結構辛いと思うんですよね。

競合も多いから、価格は安くしないといけないし、トラフィックが異常に多いからサーバ代も尋常じゃないだろうし、それでいて情報インフラとして重要だから、落ちたらまずい。

広告配信サービスと一緒で、マゾ的なサービスですよねw

 

そこで、アカウントの単価をアップするために、ツール利用料以外のマネタイズを考えてみました。

 

まずは、没にした案。

 

1.広告枠の提供

チャットツールって、ビジネスでの利用がメインなので、広告が流れてきても、ほとんどクリックしないはずです。

また、スマホアプリや有料アカウントには、広告枠を用意することも出来ません。
無料プランの左下枠に広告が出ていますが、そんなに収益は上がってないのでは?と思います。

 

2.オフィス小物の物販

ビジネス関連の小物を、すぐ購入出来るようにするのはどうかな?と思いました。

ただ、普通に考えれば、備品は総務が買いますし、チャット利用中に物を買うことって無いですね。

もうちょっと深堀すれば、何かしら可能性があるかもしれませんが、一旦は没にしました。

 

3.情報交換の場

チャットツール内アカウント同士で、職種や役職などを選んで匿名チャットが出来る機能。

主な利用目的は、ダイレクトプロモーションとアンケート収集など。

ヘッドハンティングとか、色々使えそうかなぁと思いつつ、なかなか難しそうなビジネス(賛否が多そう)なので、これも没にしました。

 

4.タクシー配車

乗車人数、乗車場所、目的地を書けば、配車してくれるサービス。

電話受付をチャットに替えるだけなので、既存のタクシー会社と簡単に連動出来るはずで、タクシー会社側もPCがあればOKという手軽さ。

これは良いかなぁと思いましたが、1件配車して100円もらったとしても、大した売上になりそうもありません。

 

・・・と、いくつか考えた上で、最終的に考え付いた案が、飲食との連動です。

詳しく説明します。

 

重要なのは、チャットツールと親和性のある金の流れです。

 

チャットツールは、ビジネス利用がメインですから、その利用者が個別にかつ定期的に金を使うタイミングは、ランチ、カフェ、手土産、会食くらいです。

全て飲食に関連するものです。

この金の流れをコントロールするのが、良策かと思われます。

 

パッと考えただけで、以下のようなサービスを思いつきました。

 

  • ランチ宅配レコメンド
    ランチ時間直前に、近くのランチ宅配をレコメンドするbot
    または広告枠。
  • カフェ紹介&注文
    営業外出中、近くのカフェ店をチャットで聞けて、即時注文して受け取れるbot
  • ビジネスサポートbot
    手頃な手土産や会食場所をレコメンドしてくれるbot

 

やっぱり、最近はやりのbotが良いかなぁとは思います。

上記したbotの中でも、ランチ宅配botが一番オススメです。

 

美味しそうなお弁当画像を、カルーセル形式でオススメ(飯テロ)されれば、どうやってもクリックしちゃいます。

そして、チャットで同時に注文する人を簡単に集められますから、売上単価も勝手に上がります。

支払いも、各自でクレカ登録させて個別決済させることも可能になるので、まとめ注文時の金のやり取りと言う不便がなくなります。

収益は成果報酬(売上の10%くらい?)とすれば、店集めもそこまで苦労しないし、最初は手数料0で提供すれば、売上だけは簡単に増加します。

さらに、同じ住所、同じタイミングで5人以上(4千円以上等)から注文されれば、5%値引き等のサービスを用意して、チャットツール経由で注文させるメリットを付けるとか。

…色々考えられそうです。

 

契約アカウントの10%が、月1回でも使ってくれれば、だいぶ売上と粗利増になりますね。

 

個人的には、ヘルシーなランチを提案してくれて、チャットツール経由で買っても同じ値段であれば、必ず使うと思います。

実際、うちの会社では、これに近い使い方をしてます。

 

こんなアイディアは、いかがでしょうか?

 

「SIer が天職です」に必要なこと

nzmoyasystem.hatenablog.com

このエントリーがバズっている。
4月15日には、はてブが500以上ついている。

Facebookではあまり反応されていないようなので、主にはてブ民」が騒いでいるのだろう。
はてブ民にはプログラマが多いが、多数が反射的に反応してしまう題材なのだろう。

また、このブログを読んで、最初に思い出したのがこの話だ。

itpro.nikkeibp.co.jp

約1年前のエントリーなので、この話を信じるならSIerはあと4年で死ぬらしい。


SIerであることを好きと主張する人はおらず、あと4年で余命が尽きると言われてしまう業界。
それがSIerの実態なのだろうか?


SIerを経営している身としては、上述した2つの話について、大筋合意は出来るものの、SIerの可能性について、見えていない部分も多いと感じる。

今日は、その辺について書いてみようと思う。

 

まず、SIerの人月商売には構造上の問題があるので、それについて説明しておく。

SIerが売上拡大を狙うには、人月規模の大きい開発を受注していくしかない。
その結果、社員だけでは足りず、下請け企業を利用して足りない工数を埋めることになる。

社員以外の比率が高まれば、その分、社員一人当たりの売上、一人当たりの粗利が大きくなる。
ここまでは、ビジネスとして全く問題ない。
下請けを使うのはどんなビジネスでも同様である。

問題なのはこの後だ。

 

プロジェクトに携わる人数が増えれば増えるほど儲かるため、システム提案がどんどん大きくなっていく。
本来ならコスト対効果を見込んで提案されるべきものが、無駄に大人数で開発する方向に提案されてしまうのだ。
例えば、パッケージやライブラリを使えば安く早く済むようなものを、相手の無知に付け込んで、一から作る提案をする。

また、下請け比率が上がりすぎると、元請け社員は管理作業のみに集中するようになる。
大規模開発が永遠にあれば、この役割分担でも良いのかもしれないが、開発ツールや開発PCの向上とともに、開発生産性は高まり、嫌でも開発工数は減っていく。
そうなると下請けを切っていくしかないのだが、元請けの管理しかできない社員ばかりでは、システムを作り上げる事が出来ず、さらにジリ貧になっていく。

これが今のSIerの問題である。

 

日本経済が活発な今、システム開発への投資が積極的に行われており、技術者不足が起きている。
そのため、今は大きな問題にはなっていないが、いずれ大きな不況が来た際には、この事態が露見するはずだ。

 

では、これを解決するためにはどうすれば良いのだろうか?

発注者がベンダー製品を最小限のカスタマイズで利用したり、内製化を進めて、SIerは派遣事業社のごとく、そのお手伝いだけに徹すればいいのか?

そうではない。
開発を専業にしているSIerだからこそ提供できる価値があるはずだ!

 

上述した問題を解決する新しいSIerのスタイルを、私は新型SIerと表現している。

私の考える新型SIerは、こうだ。

 

  1. 特定の技術または業界に特化している
  2. 特化したものの自社製品を作る
  3. 継続的な開発力と品質を提供する
  4. リモートワークでサービスを提供する
  5. 日本の顧客、日本人技術者にこだわらない

 

それぞれの項目について簡単に説明する。

1.特定の技術または業界に特化している

歯が痛い時は、内科や眼科にはいかない。
SIerという広すぎる定義で受注するのは止めるべきだ。
どんな知識も開発中に覚えればいい、という潤沢な予算は今後は用意されない。
専門性の無さが開発効率の悪さを引き起こしている事実を理解すべきだ。
むしろ、専門性が高まればコンサルティングフィーを請求できるため、提供単価がアップする。
色々な業界を網羅したい大手SIerは、総合病院のようにする分野別に特化していくべきだろう。

2.特化したものの自社製品を作る

様々なクライアントから同様のニーズを引き出し、作った自社製品をその都度カスタマイズして納品すべきだ。
長期的なライセンス費や保守費を考えると、これが一番効率の良い儲け方(収益の上げ方)である。
「何に特化するか」さえ間違えなければ、作る製品が無駄になることはなく、リスクも低い。

3.継続的な開発力と品質を提供する

クライアントから依頼があるたびに、機能別に見積りをして納品というスタイルは止めるべきだ。
システムを作るのではなく、事業をサポートするという意識にしよう。
サポートメンバー数を決め、その範囲でリリーススケジュールと追加開発範囲を決めていく。
そして、ソースレビュー、自動テスト、セキュリティ監査のような品質管理を共通して行っていく仕組みについては、SIer側で専属部隊を用意するか、専門業者に発注し工数売りとは別の価格で販売されるべきだ。

4.リモートワークでサービスを提供する

発注元に常駐してシステムを作る風習はなくすべきだ。
自社にナレッジが貯まらず、人材の流出を生むだけである。
自社からリモートによる技術サポートを実施すれば、費用を貰っている限られたメンバーだけで解決する必要がないため、生産性が極めて高くなる。
その結果、無駄な残業も無くなっていく。
「ソース持ち出しが…」といった話は、セキュリティの厳しい企業では必ず出てくるが、そのような事を気にする事業のコア開発こそ、内製化していくべきだろう。

5.日本の顧客、日本人技術者にこだわらない

専門性を高め、リモートワークが徹底できれば、開発はベトナムチーム、顧客はシンガポール、管理は日本人といった事が容易に実現できる。
日本の不況に右往左往しなくなる。
幸いにして、システム開発は単価が高く、通訳は単価が安いので、翻訳コストは大きな問題にもならない。
いずれはGoogle大先生が言語の壁を壊すか、技術者が英語を覚えてしまうだろう。

 

さて、SI業界に詳しい人は読んで気づいたかと思うが、特に目新しい事は書いてない。
世界のベンダー系大手SIerが普通にやっていることである。
IBMORACLEなどは、まさにこれらを昔から実践している。
新型SIerと書いたが、効率を追求すれば、自然と世界標準になる。

提供規模が大きいか小さいかの違いはあれど、SIerとしてはこれを目指すべきだ。

 

ようやく、タイトルの問題提起に戻る。

SIer が天職です」と技術者に言わせるためには、旧来型のSIerが新型になっていく必要がある
生産効率が上がり、残業が減り、給料も増え、顧客満足度が上がるのである。
これ以上に、望む結果はない。


さて、余談ではあるが、弊社EVERRISEは新型SIerである。
旧来型SIerが変わるのを待てない人は、弊社へ転職してくる事をお勧めする
あなたに天職を提供することが出来るだろう。

www.ever-rise.co.jp