SIer関連メモ書き

SIer関連のメモ書きをしておきます。お客様向けも、業界人向けも、ごっちゃまぜ。

「SIer が天職です」に必要なこと

nzmoyasystem.hatenablog.com

このエントリーがバズっている。
4月15日には、はてブが500以上ついている。

Facebookではあまり反応されていないようなので、主にはてブ民」が騒いでいるのだろう。
はてブ民にはプログラマが多いが、多数が反射的に反応してしまう題材なのだろう。

また、このブログを読んで、最初に思い出したのがこの話だ。

itpro.nikkeibp.co.jp

約1年前のエントリーなので、この話を信じるならSIerはあと4年で死ぬらしい。


SIerであることを好きと主張する人はおらず、あと4年で余命が尽きると言われてしまう業界。
それがSIerの実態なのだろうか?


SIerを経営している身としては、上述した2つの話について、大筋合意は出来るものの、SIerの可能性について、見えていない部分も多いと感じる。

今日は、その辺について書いてみようと思う。

 

まず、SIerの人月商売には構造上の問題があるので、それについて説明しておく。

SIerが売上拡大を狙うには、人月規模の大きい開発を受注していくしかない。
その結果、社員だけでは足りず、下請け企業を利用して足りない工数を埋めることになる。

社員以外の比率が高まれば、その分、社員一人当たりの売上、一人当たりの粗利が大きくなる。
ここまでは、ビジネスとして全く問題ない。
下請けを使うのはどんなビジネスでも同様である。

問題なのはこの後だ。

 

プロジェクトに携わる人数が増えれば増えるほど儲かるため、システム提案がどんどん大きくなっていく。
本来ならコスト対効果を見込んで提案されるべきものが、無駄に大人数で開発する方向に提案されてしまうのだ。
例えば、パッケージやライブラリを使えば安く早く済むようなものを、相手の無知に付け込んで、一から作る提案をする。

また、下請け比率が上がりすぎると、元請け社員は管理作業のみに集中するようになる。
大規模開発が永遠にあれば、この役割分担でも良いのかもしれないが、開発ツールや開発PCの向上とともに、開発生産性は高まり、嫌でも開発工数は減っていく。
そうなると下請けを切っていくしかないのだが、元請けの管理しかできない社員ばかりでは、システムを作り上げる事が出来ず、さらにジリ貧になっていく。

これが今のSIerの問題である。

 

日本経済が活発な今、システム開発への投資が積極的に行われており、技術者不足が起きている。
そのため、今は大きな問題にはなっていないが、いずれ大きな不況が来た際には、この事態が露見するはずだ。

 

では、これを解決するためにはどうすれば良いのだろうか?

発注者がベンダー製品を最小限のカスタマイズで利用したり、内製化を進めて、SIerは派遣事業社のごとく、そのお手伝いだけに徹すればいいのか?

そうではない。
開発を専業にしているSIerだからこそ提供できる価値があるはずだ!

 

上述した問題を解決する新しいSIerのスタイルを、私は新型SIerと表現している。

私の考える新型SIerは、こうだ。

 

  1. 特定の技術または業界に特化している
  2. 特化したものの自社製品を作る
  3. 継続的な開発力と品質を提供する
  4. リモートワークでサービスを提供する
  5. 日本の顧客、日本人技術者にこだわらない

 

それぞれの項目について簡単に説明する。

1.特定の技術または業界に特化している

歯が痛い時は、内科や眼科にはいかない。
SIerという広すぎる定義で受注するのは止めるべきだ。
どんな知識も開発中に覚えればいい、という潤沢な予算は今後は用意されない。
専門性の無さが開発効率の悪さを引き起こしている事実を理解すべきだ。
むしろ、専門性が高まればコンサルティングフィーを請求できるため、提供単価がアップする。
色々な業界を網羅したい大手SIerは、総合病院のようにする分野別に特化していくべきだろう。

2.特化したものの自社製品を作る

様々なクライアントから同様のニーズを引き出し、作った自社製品をその都度カスタマイズして納品すべきだ。
長期的なライセンス費や保守費を考えると、これが一番効率の良い儲け方(収益の上げ方)である。
「何に特化するか」さえ間違えなければ、作る製品が無駄になることはなく、リスクも低い。

3.継続的な開発力と品質を提供する

クライアントから依頼があるたびに、機能別に見積りをして納品というスタイルは止めるべきだ。
システムを作るのではなく、事業をサポートするという意識にしよう。
サポートメンバー数を決め、その範囲でリリーススケジュールと追加開発範囲を決めていく。
そして、ソースレビュー、自動テスト、セキュリティ監査のような品質管理を共通して行っていく仕組みについては、SIer側で専属部隊を用意するか、専門業者に発注し工数売りとは別の価格で販売されるべきだ。

4.リモートワークでサービスを提供する

発注元に常駐してシステムを作る風習はなくすべきだ。
自社にナレッジが貯まらず、人材の流出を生むだけである。
自社からリモートによる技術サポートを実施すれば、費用を貰っている限られたメンバーだけで解決する必要がないため、生産性が極めて高くなる。
その結果、無駄な残業も無くなっていく。
「ソース持ち出しが…」といった話は、セキュリティの厳しい企業では必ず出てくるが、そのような事を気にする事業のコア開発こそ、内製化していくべきだろう。

5.日本の顧客、日本人技術者にこだわらない

専門性を高め、リモートワークが徹底できれば、開発はベトナムチーム、顧客はシンガポール、管理は日本人といった事が容易に実現できる。
日本の不況に右往左往しなくなる。
幸いにして、システム開発は単価が高く、通訳は単価が安いので、翻訳コストは大きな問題にもならない。
いずれはGoogle大先生が言語の壁を壊すか、技術者が英語を覚えてしまうだろう。

 

さて、SI業界に詳しい人は読んで気づいたかと思うが、特に目新しい事は書いてない。
世界のベンダー系大手SIerが普通にやっていることである。
IBMORACLEなどは、まさにこれらを昔から実践している。
新型SIerと書いたが、効率を追求すれば、自然と世界標準になる。

提供規模が大きいか小さいかの違いはあれど、SIerとしてはこれを目指すべきだ。

 

ようやく、タイトルの問題提起に戻る。

SIer が天職です」と技術者に言わせるためには、旧来型のSIerが新型になっていく必要がある
生産効率が上がり、残業が減り、給料も増え、顧客満足度が上がるのである。
これ以上に、望む結果はない。


さて、余談ではあるが、弊社EVERRISEは新型SIerである。
旧来型SIerが変わるのを待てない人は、弊社へ転職してくる事をお勧めする
あなたに天職を提供することが出来るだろう。

www.ever-rise.co.jp